| よくばりじいさんと栗のいが ー神奈川県横浜市・瀬谷ー
むかし、あるところによくばりなおじいさんがいました。
村の人々はこのおじいさんのよくばりには、手をかなりやいていました。
田んぼの稲の穂がそろそろ出はじめようとする頃、おじいさんの家の前で
野良帰りの村の衆が大声でこんな立ち話をしていました。
「おらあ、隣村の若い衆に聞いたんだが、穂肥にゃあ、あそこの山の
栗のいががうんとええんだとよ。」
「ほーそうか、じゃあわしのところでもあの山の栗さ取ってきて、
まくべえや。」
この話を聞いては、じいさん捨てておくわけがありません。
「しめしめ、こいつは耳よりの話だ。そんなにいい肥やしなら、
誰が他人に渡すもんか、おらんとこの田んぼにどっさりとおんまけりゃ、
うんと稲がほきるにちげえねえだ。」
おじいさんは夜があけるのを待ちかねて、大八車に大きな竹かごを
積み込んで山へ大急ぎで入りました。
「ほおー、こりゃあどっさりあるわ、たくさんとって・・・」
にんまり一人ごとを言いながら、手当たり次第、まだ青い栗のいがまで
一つ残さずかごに積み込み、我が家の田んぼに全部まいて、そしらぬ
顔をして暮らしていました。
さて、それから一月あまりが過ぎました。
田んぼは見渡す限り黄金色にうめつくされて、風に波打ち、待ちかねた
収穫の時がやってきました。
おじいさんの田んぼは、心なしかよその田んぼよりも稲穂が重そうに
見えました。
「さあーて・・・」と喜び勇んで稲刈りにきたおじいさんは、田んぼに
片足をふみこんだとたん「あいててー、ほーいてーよー」と大声だして
飛び上がりました。あの時そっとまいておいた栗のいがが稲の茂みで
見えなくなっていたのです。
あまりの痛さに田んぼから飛び出して尻もちをついたおじいさんの
足の裏は針ねずみのようになっていたというわけです。
これにこりたおじいさんはそれからというもの、村の人たちに決して
欲深いまねやいじわるをしなくなったといわれています。
いうまでもなく栗のいがは、生では肥しとしては何の役にも立たないのです。
焼いて灰にしてから追肥にするのだということを村の衆はわざと言わなかった
のです。
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